そして意外なことに、どちらも経済産業大臣指定の伝統的工芸品ではありません。それでも選ぶ価値があるのはなぜか、というところから説明します。
「なめし」で革は決まる
動物の皮は、そのままでは腐ります。腐らない「革」にする工程がなめしです。方法は大きく2つあります。
| タンニンなめし(植物性) | クロムなめし(化学薬品) | |
|---|---|---|
| 使うもの | 植物由来のタンニン | クロム化合物 |
| 時間 | 非常に長い | 短い |
| 硬さ | 張りがあり、しっかりしている | やわらかい |
| 経年変化 | 色が濃く深くなる(エイジング) | ほとんど変わらない |
| コスト | 高い | 安い。世界の革の大半がこちら |
「革は使うほど味が出る」と言われるのはタンニンなめしの話です。クロムなめしの革はほとんど変化しません。どちらが良いという話ではなく、財布やベルトのように長く持つものはタンニン、衣類やバッグの柔らかさが要るものはクロムという使い分けです。
栃木レザーは会社の名前です
ここは誤解が多いところです。「栃木レザー」は栃木県で作られた革の総称ではなく、株式会社栃木レザーという1社のブランドです。
同社の公式サイトにはこうあります。
「全て天然由来の植物タンニンで鞣し、有害な物質を排出する薬品は一切使用しない」
― 株式会社栃木レザー 公式サイト
タンニンなめしは時間がかかるため、世界的に減り続けている製法です。それを主力として続けている——というのが、この革が支持されている理由です。
「栃木レザー使用」と書かれていれば、素材としてこの会社の革を使っているという意味です。作っているのは別の工房であることがほとんどです。素材の良さと、縫製の良さは別なので、作り手の情報も見てください。
姫路の白なめし革
姫路は皮革の産地としての歴史が長い地域です。業界団体である姫路皮革製品推進協議会は「姫路は、日本における皮革産業発祥の地とされています」としています。
姫路を象徴する製法が白なめしです。姫路のタンナーである山陽の公式説明によると、白なめしとは「薬品を使わずに、水、塩、菜種油のみで皮をなめす手法」です。
タンニンもクロムも使わない、という点でかなり特異な製法です。仕上がりは名前のとおり白く、時間が経つと飴色に変化していきます。
姫路市も皮革を公式に地場産業として位置づけており、市の産業局が「姫路の地場産業のひとつである皮革の振興と、本革が好きな市内外の方々への情報提供を目的として」ガイドマップを作成しています。
革は寄付額帯の幅が広く、小物から鞄まであります。「素材の産地」と「作った工房」の両方を確認してください。
どちらも伝統的工芸品ではない理由
栃木レザーも姫路の革も、経済産業大臣指定の伝統的工芸品には含まれていません。
| 都道府県 | 経済産業大臣指定の品目 |
|---|---|
| 栃木県 | 結城紬/益子焼 の2件のみ |
| 兵庫県 | 丹波立杭焼/出石焼/豊岡杞柳細工/播州三木打刃物/播州そろばん/播州毛鉤 の6件のみ |
理由はそれぞれ違います。栃木レザーは1社のブランドであり、指定の要件にある「一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い」に当てはまりません。姫路の白なめし革のほうは、兵庫県が指定する県の伝統工芸品という位置づけです(※県公式での直接確認は取れておらず、ここは断定を避けます)。
伝統的工芸品の指定は「日常生活で使うもの」「手工業的」「伝統的な技術・原材料」「一定地域に産地が形成されている」という要件を満たすかどうかの制度です。指定がないから劣る、ということにはなりません。革のように、産地というより企業の技術で成り立っている分野では、そもそも制度の想定が合わないだけです。
返礼品として選ぶときの注意
- 色移りに注意 … タンニンなめしの明るい色の革は、初期に衣類へ色が移ることがあります。白いパンツのポケットに入れる財布としては向きません
- 水に弱い … タンニンなめしは水シミが残りやすい。雨の日に使うものなら、クロムなめしやコーティングされたものを
- 最初は硬い … 使い始めは「こんなに硬いのか」と驚きます。1〜2か月で手になじみます
- 手入れは「乾拭き」から … クリームを塗りすぎると逆にシミになります。まずは乾いた布で拭くだけ(手入れの記事)
革は実物の色味が写真と違いやすい素材です。同じ品でも複数の店の写真を見比べると失敗が減ります。


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